8月12日(金曜日)

会社帰り。
夜も10時を過ぎ、早く帰って家でのんびり過ごしたい週末の夜。

雷が落ちたらしく、乗っていた電車もそれに合わせて止まってしまいました。

  ビカビカビカ〜ッ☆ 

…家の窓から眺めている分には 雷は『わ〜光ったぁ♪綺麗だぁ』で良いのです。
しかし…
今日の私がいるのは 満員電車の窓際特等席。
あたくし、うちの犬、源之助君ほどじゃないけれど 正直 雷は得意ぢゃありませぬ…。
こんな時に 源之助だったら…
植木の土を引っ掻き回すとか 吠えまくるとか 狂ったように暴れることも可能なのだけど。
場所も場所。
混雑した電車の中。
鉄橋の上。
下は川。
外は真っ暗。
…逃げ場がない…。
社内放送で『電車に雷が落ちる心配はありません』とは言うものの。
余計な不安と混雑が いらない想像力をかきたててくれるのでありました。

それでも ゆっくりゆっくり電車は動き、雷は遠くで光るくらいになっていたので 
このまま乗っていれば いつかは着くであろう、と 、心は 犬から人間に戻り、
呑気に音楽を聴いたり、目の前のおじさんの白髪を数えて眠くなってみたりしつつ
時間をつぶしておりました。

なのに〜。
竹ノ塚の駅について、この先の電車も止まっているので 強制的に皆 電車を下ろされてしまいました。
時刻はすでに夜中の0時をとっくに過ぎています。
復旧のメドが立たない!?
え?え? ここから ど…どうしろと…!?

ひとまず様子をみてみましょう。

駅員室には 駅員に『どうにかしろよっ!帰りたいんだよっ』と どなりつけている人達が殺到しています。
…おいおい。
駅員に雷がなるのを止めさせろ、いますぐ停電を直してオレを家に戻せって…
この人は 駅員を神様と勘違いしているらしい。
それとも みんな親が危篤とか 子供が生まれるとかで今すぐ帰りたいのかしら?
不謹慎にも 面白くなって いざとなった時の人間模様を ちょっと観察してしまいました。

どなっている人。(大半が 八つ当たり)
駅員にバスを出せとか 提案したり 意見を言い合う人。
電話をしたり メールを打ってる人。
座り込んで寝てる人。
だけど ツワモノ賞としては ある1人のおばさんで 自分と子供の分の切符を精算した後で
それの切符は出さずに 機械を無理矢理通り、娘に一言。
『ちゃんと切符をとっとくのよっ。ここからタクシーで帰る金額を後でこの駅に請求しに来るからね』

…いろんな人がいるなぁ…。
なんて 自分も 友達に『あははは 今ね〜大変なの〜』なんてメールを打ったりしながら 
待っていた1人でありましたが…
夜中の1時になった時点でも 復旧のメドが立たないという放送。
駅前にはタクシー待ちの行列。

      あなたな〜ら どうする〜?
            あなたな〜ら どうする〜?

外は…ドシャ降りに近い雨。
   
…歩く?

…え?

夏の雨は嫌いじゃない。
道もわかる。
ただ…ちょっと遠いだけ。 
ざっと…2時間半くらい?
ほらほら、自分改造計画は 始まったばかりだし
ダイエットには いいんじゃな〜い?
携帯の電池は あとちょっとしかないけれど 
ウォークマンの電池はまだまだあるし…音楽の準備は万全よ♪
…歩いてみちゃう?みちゃう?

ホントは そんなの心細い。
でも 人混みの中に1人でいる事も 心細かった。

バイク屋の兄ちゃんが 迎えに行ってあげようか?とメールの返事をくれたけど
こんな夜中にそれは申し訳ないし…
誰にでも甘えていいわけじゃないもんな。
ありがとう、でも 大丈夫、なんとかなるわ!と断った。 
そうよっ!歩いちゃった方が 後々 面白いかもしれないしっ。
後で ホントに大変だったのよ〜って 笑い話のネタになるかもしんない。
…なんて 決めたのは 夜中の1時過ぎ。
竹ノ塚から6駅 歩いてみることにしました。

はじめは デューク更家よろしく大きな歩調で 歌いながら。
国道4号にぶつかり、さぁ 後はまっすぐ歩けばいいのよ。
テクテク歩いている時に 同じ方向へ歩いているおじさんが1人いる事に気がつきました。
多分、このおじさんも歩き組なんだ!と思うと同志ができたみたいで ちょっと嬉しかったりして。
駅には あんなに人がいたのに 歩こうって思う人は少なかったらしい。
…まぁ こんな雨の夜だし。当たり前か。
歩こうだなんて方が アホなのよ。
はーい、はーい、私は アホで〜す。
心細いから 頑張っておじさんより少し離れた間隔で歩いていた。
けれど 旧4号にぶつかったあたりで 私は右へ おじさんはまっすぐ…。

ああ、さようなら、おじさん。
私も頑張るから おじさんも頑張るのよっ。

そう心の中で挨拶をして また1人で歩き始めました。
歩き始めて すでに1時間経過。
…バイクや車での距離感と歩く距離感って こんなに違うもんなんだ…。
慣れた道なのに 夜は どうしてこんなに人を不安にさせるんだろう。
まだ草加にすら着いていない。
時刻は夜中の2時近く。
かなりメゲはじめている自分。

やっぱり…意地張ってないで迎えにきてもらえば良かった…。

もう遅いわよ。だいたい 彼氏だろうが友達だろうが
そうそう甘えていいもんじゃぁないのよっ。

わかってるもん。
だから歩いているじゃんか。

ほら、今ならタクシー拾えそうよ?
どうする?

うんにゃっ!
ここまで歩いてしまったからには ここからタクシーだなんて面白くない。

何それ!?意地っ張りっ!

そうよ…意地っ張りだもん…自分でもイヤになるくらい。
でも…歩くって決めたのは自分だし 歩くって宣言しちゃったからには
タクシーは ずるっ子な気がして なんか納得いかないんだもん…。

座り込みたいくせに。

うん。座り込みたい。

でも…雨降ってるもんね。

うん。雨だもんね。

歩くしかないね。

うん。歩くしかないね…。

そう 自分に言い聞かせながら歩いている足取りがなんだかトボトボしてきてしまいました。
これじゃぁ いくら距離を歩いてもダイエットにもなりません。

だけど…ふと気がつくと 前を1人のおじさんが歩いています。
あれれ???さっきバイバイしたおじさん!?
なんで?
…もしかしたら この人は道を知らないで歩いている?
さっきの道は、間違っちゃってたの?
…それにしても いつの間に私の前に出たんだろう!??
だけど なんだか 私も もうちょっと頑張ろうっ!と元気が出てきました。
しばらくして おじさんが ちょっと立ちとまっている間に 追いついてしまい…
そこで私も立ち止まってしまったら 絶対に変な人だと思われそうなので 
さりげな〜く、さりげな〜く、
自分はちょっと近くまで歩いているだけよって足取りで抜かしてみました。

するとしばらくすると おじさんは 私を抜きました。
なんだか置いていかれそうなくらい早くて 結構 がんばって後ろを歩いていました。
また おじさんが立ち止まった時に 私が抜かします。
抜いた…と思ったのに。
いつの間にか おじさんが前の通りに出てきて 再び私の前を歩いています。
れれれれ!?
さっきのおじさんの…影武者!?
左手に持ったタオルにくるまれたペットボトルも同じ…。
そして 再び私が抜かすチャンス到来!
おじさんがちょこっと休憩、とでもいうように 閉まったシャッターの前で
立ち止まっていた時のことでした。

きっとこれでもう 抜かされる事はないだろう。
いつの間にか おじさんも別の方向へ歩いていって ふりむいたとしても誰もいなくって、
私1人になってるんだ。それが 当たり前だし それ以外に何があるというのだ!?
そして 今後とも 絶〜対に おじさんと会う事はないであろうし
会っても 私は 顔を忘れているに決まってる。
同志なのに…(いや、私が勝手に思っていただけだけど)
だから おもいきって言ってみました。

『竹ノ塚から 歩いていますよね♪』

おじさん、びっくりしてたけど
『あ。はい。』

『どちらまで歩かれるんですか?』

『松原まで…』

あたしよりも ちびっとだけ近いじゃんっ。
『じゃぁ 頑張ってくださいね!』

一方的に話して 一方的に去る。
だけど 自分も頑張ろうって思えて再び大股歩きで歩きだしました。
テクテク…テクテク…
もうすぐ草加だ!
さっきよりも雨が弱くなってきた。
大丈夫!
草加からなら歩いたことが何度もある。
あとちょっとだ!
だけど 疲れたぁぁっ。
でも がんばるのっっ。
だけど 疲れたぁぁぁっ。
大丈夫!がんばる以外、何があるのだ!
泣いていい?
…駄目っ!
自分との戦いを繰り返しながら 草加市に入る。

そんな時 電話が鳴って 私に天使が降りてきた!!
『今さ〜旧4号を走ってるんだけど、まだ歩いてるのなら乗っけてあげるよ?』
Oちゃんだぁぁ・・・。
歩いてるっ 歩いてるっ まだ歩いてるっ。
あたし、なんてラッキーなんだっ。そんでもって 君は なんていい人なんだっ。

『あはははは 絶対 意地張ってそうだからさ〜』

う…その通りだよぉ。
でも 後悔してたりするんだよぉ。
でも こんな夜中に ましてや雨の中、『お願い♪迎えに来て欲しいな♪』だなんて 
彼氏だったとしても 女友達だったとしても なんだか利用してるみたいで 言えないじゃんかぁ…。
だけど メチャメチャ泣きそうだったよ〜。

『あははははは・・・・・』

おかげで 予定では3時か4時に着くはずの家に 2時30分頃に帰り着きました。
あ〜LUCKY ☆ HAPPY☆
とにかく神様 Oちゃん、途中 励ましメールをくれた友達、ありがとうございました。
ひとまず…おやすみなさいです。
ZZZZZZ……